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喫茶のねずみ
「最近の絵を描いたら」という人のいて、ごそごそ探して出した絵の具はカラカラ、鉛筆も筆も絵の具もぼちぼち新調していつもかばんの底のほうにあった。忙しさの隙間に近頃見つけた喫茶は、ひっそりとしてこじんまり。いつも暇そうな雰囲気で、お邪魔するにはぴったり。窓際に置かれた古布のねずみが、西日を浴びていかにもねずみを誇っていた。
でも私のほうは、新しい絵の具、筆に慣れなくて、もっと水を拭きなさいとねずみに笑われた。